創what?

詐欺カルトからの覚醒メソッドを主軸に、世の中に蔓延る「なんとなく受け入れているもの」に風穴を開けましょう。こちらは、膨大な量の刷り込みにより凝り固まった思考を解きほぐし、自分らしさを解放し自由に生きる為のブログ。

カルトスカウター・15

 予定日の三日前。
 昼休憩中に妻からの着信。
 こんな時間だと嫌な予感。携帯のボタンを押した。

「ライアー。あのね、もしかすると破水してるかも知れない。午後に病院行きたいんだけど」

 スッ転びそうな勢いで、会社を出た。

 朝起きたら下着が湿っていたらしく、妻が友人に電話相談をしたことで、「それって破水じゃない?」となったそうだ。病院に連絡すると、破水かも知れないので、入院の用意をして来るようにと言われた。

「もっと、ドバッと出るもんかと思ってた」
「だな。寝てる時だったからじゃないかね」

 腹痛とか、違和感もなかったそうだ。そう言えばやっとエコーで女の子だと判明した時は、これでもかといったドヤ顔をされた訳だが、破水には気付かなかったのというのは流石に笑った。

 診断の結果、即入院が決定した。まだ陣痛がない。この状態が続くのは危険らしく、促進剤を注射することになった。いよいよだ。

「出産の際に立ち会えるのは一人です」
「カメラは基本的にNG。赤ちゃんの撮影は出産後に好きなだけお願いします」

 助産師さんの説明を受けた。なるほど、身内で囲んで応援団みたいになったら迷惑だもんな。出るもんも出なくなるだろうし……そんなことを考えながら、陣痛待ちの妻の側にいた。

 一つ判ったのは、こんなときには夫なんか全く役に立たないということだ。ベッド脇でリンゴとかかじってるくらいしか出来ない。だから昔の人は普通に仕事をして出産を待つ人が多かったのだろうか。先にそれを強く言って欲しかったな。

「ライアー、ソワソワしてんのは解るけど、帰りなよ」
「良いの?」
「あんた全然話聞いてないじゃん。陣痛が来ないと、身内は泊まれないの」
「え」

 そんなすぐに産まれる訳ではないと言われ、一旦会社に戻り、報告と引き継ぎをして自分の宿泊準備をした。しようとした。タンスの前で悪戦苦闘。どこに何が入っているのか、全く解らなかったのだ。
 いつも、何でも妻に任せきりだったことに気が付いた。
 妻にしてみりゃ、子供が二人になるようなもんだな。

 ちょっと反省した時、携帯が鳴った。

「ライアーさんかい」
「はい」
「○○だが。遅くにすまねえ。今、電話大丈夫かい」

 過去に何度も頭を下げ、何度も罵倒され、散々心を折られてきた、あのお客だった。

「○○さん! どうされましたか?」
「部下の仕事なんだが、ちょっと緊急の案件が出てきてなぁ。警備が必要なんだが。君の名刺が、どのデスクにも置いてあって、集めたらトランプ出来るんじゃねえかって噂になっちまってな。どいつもこいつも俺をまるで悪者みてえに見やがる。まあ、いい加減どうかと思ってんだ。どうだ。仲直りがてら、一丁やってみっか?……おい、聞いてっか?」

 正直それどころじゃねえって言ってみたかった。
 でも、心が踊った。何度も、何度も頭を下げた。見えてないのに、これって不思議な行動だな。

 上手くいく。きっと、何もかもが、上手くいく。心の中で、私は歓喜の題目を上げていた。

続く。