創what?

詐欺カルトからの覚醒メソッドを主軸に、世の中に蔓延る「なんとなく受け入れているもの」に風穴を開けましょう。こちらは、膨大な量の刷り込みにより凝り固まった思考を解きほぐし、自分らしさを解放し自由に生きる為のブログ。

カルトスカウター・9

「赤ちゃん?」
「うん。いる。お父さんの月命日だなぁって思ったら、いるってなって」

 何の根拠もなく自信たっぷりの妻は、嬉しそうにお腹をさすった。マジかよ。

 私の妻は、目が悪い代わりなのか(眼鏡を掛ければ見えるが)他の感覚が異常なほど優れている。出会った当初から感覚の優れた人だなとは思っていた。だが現在に至ってはもう、妻ならそれくらい朝飯前に言い当てるなんて珍しいとも思わなくなった。
 晴れた空を見上げて「嵐が来る」と言って私を笑わせた二時間後にどしゃ降りになったり、テレビに映る芸能人を見て「こいつ性犯罪やる顔」と失礼なことを言った数ヶ月後にその男が下着泥棒で捕まったりと、枚挙に暇がない。これは別にオカルトでも何でもなく、観察眼が優れているだけの話。私はまだ、この時はオカルトじゃねえかと思っていたが。

──「待ってろ、今おしっこひっかけてくる」
「もっとましな言い方出来ねえのかよ」

 妊娠検査薬を片手に猛ダッシュする妻。数分後、トイレから雄叫びが聞こえた。

「おっしゃー!」
「なんでだよ。蹴った、わけねえか」
「うん。なんとなくだけど、絶対いると思った」
「すげえ矛盾だが、まあいいか。明日病院に行こうか」
「そうだね。ベビー服も見に行きたいな」
「おいおい、早すぎだろ。まだ男か女かもわか……わかるのか?

 妻は笑顔たっぷり頷いた。なんだろうか、この根拠のない自信は。本気で怖くなってきた。

「女の子だよ」
「えー、まだわかんないじゃん」
「わかるのぉ」
「そんなもんか」

──翌日、病院で検査した。

「おめでとうございます。五週目を過ぎたところですね。ところで……」

 お医者さんは真剣な顔をした。問題発生かと、妻は不安になった。

「ご結婚は、されていますか?」

 そんなことかよ! と妻は思った。いや、仕方ないというか、それは大事なことだよ。うん。おめでたくない人もいるかも知れないし、そう思われたのかも知れないけどな。

「はい、してます」
「あ、それなら、大丈夫ですね! おめでとうございます」

 お医者さんは、やっと笑顔になった。
 
 その一部始終、妻からの話を聞きながら、私は親になることの意味を、考えていた。

「どうしたの。なんか、嬉しくなさそう」
「いや、違うよ。なんか、嬉しさもあるけど、怖くってな。自分が親になるなんて、最近まで考えもしなかったから」
「そっか……パパママデビューまで、頑張ろうね」
「そうだね。頑張ろう」

 出産までには、わかるのだろうか。
 親になったら、わかるのだろうか。
 いや、一体何がわかるのだろうか。
 
 漠然とした不安と共に、目の前で微笑む妻のお腹を、じっと眺めた。

続く。