創what?

詐欺カルトからの覚醒メソッドを主軸に、世の中に蔓延る「なんとなく受け入れているもの」に風穴を開けましょう。こちらは、膨大な量の刷り込みにより凝り固まった思考を解きほぐし、自分らしさを解放し自由に生きる為のブログ。

カルトスカウター・8

 結婚パーティーで妊娠も報告したいね、なんて言っていたのだが、そう上手くは事運ばず。
「いつになったら出来るかねぇ」
「だな」

 もしかすると俺の方に原因が、なんて思ったりもしたが、まあ結婚したばかりだし、新婚生活を楽しもうかね、なんて思っていた矢先のことだった。

「ライアーさーん、こーんばーんはー!」

 来た。奴等だ。東京でも田舎でも、ほぼほぼ同じテンション。「ライアー君」が「ライアーさん」と、敬称が変わっただけだ。金太郎飴という言葉が浮かんだ。
 田舎の男子部長は、随分と年下の青年だった。

 このご時世に、直接訪問。会合なら暫く出れません、とメールしたはずだったが、この人達はどうやら言葉が通じないようだ。

「ご結婚されたと聞きまして」
「ええ、そうなんですよ」
「おめでとうございます!」
「ありがとうございます」
「記念日はいつですか」
「今月の三日に」
「凄いじゃないですか!それはどちらがお決めに?」
「うーん、妻、かな」
「そうですか!使命がありますよ!

 何が使命だよ。俺は、疲れたんだよ。あんだけ頑張ったのに、借金だけこさえて何にも変われなかった自分に、ほとほと嫌になっちまったんだ。
 夢を叶えられなかったことを、創価のせいにしたくなる自分にすら嫌気が差してんだよ。って言ったところで、わかんねえだろうな。どうせ、そんな時こそお題目ですよ、だろ? 上げてるよ。胸中だけど。問題は学会活動だよ。その時間をもっと好きなことに費やすべきだったって思ってんだよ。わかるかな、これを人は後悔と呼ぶのよ。

 予想通りの言葉が返ってきた。東京でも聞いた言葉。そして無理やり作った笑顔。やめてくれ。ギラギラと疲れきったような青年の眼を見ていると、あの頃の自分を嫌でも思い出してしまう。

「いや。もう、そういう話はいいんだ」
「奥様も是非入会されては」

 おいこら。人の話を聞くよりも、自分の言いたいこと優先。なんでこう、ボールを胸に投げられないんだろう。お前のストライクゾーンは一体、どこなんだい。
 
 創価の男子部や婦人部の、交代制かよ、と思う勢いの家庭訪問は連日のように続いた。
 東京では、自分も同じことをしていたんだよな、と思ったら……私はこの人達に何も言えなくなってしまった。
 何で強く言えないのかと妻に怒鳴られる日々が続く。

 これは、さ。こうせん流布っていう偉業を成し遂げるために必要な活動、なんだよって。言おうとしたけれど、声が出なかった。非活だった義父を否定することになる。そんなことは、妻には言えない。無駄に妻を悲しませたり、苛立たせたりする夫がどこにいる。
 それに、私自身はもう活動はしないと決めていた。信仰を捨てたわけではないが、自力でやってきた自負と、自然に仏界に至るべしの御文を胸に刻んでいる自覚があったから。
 でも違う。違うんだよな。
 学会活動しなくても実証を示す事が出来ないのは、おかしいと思う気持ち。もう半分は、活動しなくなってからの人生が好転してきた感覚があったから、活動しなけりゃ信仰者じゃないとまで言われるのは、そりゃ一体なんだと思う気持ち。
 活動しないことに罪悪感を植え付けようようとするのは、それは違うんじゃないかって。

──「功徳だよぉライアーくぅん。活動してないのに何で福運あるんだよぉ~羨ましい! いよいよだよぉ、ライアー君!いよいよ池田先生に恩返しをする番が……」

 中略する。部長が連れてきた、壮年に片足突っ込んだ県幹部にはそう言われた。東京でも何度言われたかわからない。恩返しって。組織の人達には確かに世話にはなったよ。でもそれ以上に貢献した筈だ。やりたくないことだってやったし、先生の書籍だって買って読んだよ。お礼言われるのはこっちじゃねえのか。

 あんた、どこかで疑って活動してるだろ。嫌々やっていたら功徳なんて出ないよ。俺みたいに、戸田先生の指導通り仕事三人前やってみろや。ところでお前、どこの誰?


──「奥様を是非、座談会に」
「いえ、結構です」
聞きましたよ。五月三日に入籍されたと。これには意味があるのよ

 うっせえなババア。 あんたが帰ったら修羅場になるんだぞ。そういう話すんなや!
 しかも情報筒抜けかい。どうなってやがる。

「おばさま。一年は365日です。でも、記念日はもっとあります。ということは必ず何かの記念日がどこかで重なるわけで、何も特別なことでは」
「まぁ! なんて聡明な奥様なの! あなたには絶対に使命があるのよ~」
「ないですよ」

 頭痛が酷くなった妻は顔をひきつらせるも、笑顔で一礼して部屋の奥へと消えた。ああ、またこれで今日も罵り合うのか。よく知りもしないババアをフォローする身にもなれよ。もう誰も貶めたくないんだよ俺は。わかってくれよ……

 使命なんかじゃない。
 五月は、義父の誕生月なんだよ。だから妻は、この月に記念日を作りたかったんだよ。
 こんなことを言ってもきっとこいつらは、「意味がある」って言うんだろ。だから言わない。腹が立つだけだ。

 そして五月も終わりに近づいたある日、夜中に妻は突然に、呟いた。

「あ、そうだ、今月お父さんの墓参り行ってないや。行かなきゃ……いるぅ!
「いる? なになになに、何が? え、お義父さん? 嘘だろ、やめろよぉ」

 部屋を見渡して一人で震えた。マジかよ。そういうのダメなんだよ本当に。

「違う」
「なになになに」

 妻は、目を丸くして言った。

「赤ちゃん!」

 
続く。